北海道駒ケ岳


大陸分裂によって引き起こされた地球温暖化

 5500万年前に起こった大規模な地球温暖化が大陸分裂によって引き起こされたことを示す証拠が見つかったそうです。

National Geographic
Volcanic Activity Triggered Deadly Prehistoric Warming

山陰中央民報
火山噴火で地球温暖化か 5500万年前

原著論文:
Storey, M., Duncan, R.A. and Swisher III, C.C., 2007.
Paleocene-Eocene thermal maximum and the opening of the Northeast Atlantic.
Science, 316: 587-589.

 この研究で出てくるPETMというのは、Paleocene-Eocene Thermal Maximum というもので、日本語だと「暁新世/始新世境界温暖化極大イベント」というようです。

 PETM というのは、暁新世/始新世の頃に起こった21−22万年の間に及ぶ地球規模の大気候変動で、この変動では海水面温度が熱帯で5℃、北極で6℃も上昇したそうです。また海の酸性化も同時に起こり、絶滅した深海底の底生有孔虫は30−50%に及んだといいます。

 このPETMを示す地層は全地球的に見つかるものの、いつ起こったかということが精密には決まっていなかったそうです。今回の研究の要点は、PETMの年代を精密に見積もったところ、約5500万年前の大陸分裂直後に対応したということです。この大陸の分裂とその後の海洋底拡大によってグリーンランドとヨーロッパ大陸が分かれ、現在の大西洋ができています。

 この研究では、北大西洋の海底堆積物中で見つかるDanish Ash-17という火山灰の年代をアルゴン同位体を用いた非常に精密な年代測定によって決定し、その火山灰のすぐ下にあるPETMに対応する地層との年代関係を古地磁気変動の解析から見積もっています。

 またDanish Ash-17に対応する同年代の火山灰がグリーンランドで見つかるそうです。そのグリーンランドの火山灰とグリーランド周辺で見つかる大陸分裂に対応する大量の玄武岩溶岩流との年代の関係も過去の研究から分かっているので、一連の研究により

PETM―Danish Ash-17―グリーンランドの火山灰―大陸分裂に対応する大量の玄武岩溶岩流


の年代的な関係が明らかになり、大陸分裂に対応する大量の玄武岩溶岩流の噴出の後に PETM が起こったという結論が導かれるようです。

 さて火山活動が起こると大量に大気中に放出された二酸化硫黄がエアロゾルとなって大気中を浮遊し、太陽光を遮ってしまうので、通常は寒冷化に向かうと考えます。

 この研究では火山活動によって温暖化が起こるというストーリーを述べているのですが、どうも噴き出すマグマ中から二酸化炭素などの温暖化ガスが放出されるわけではないようです。マグマには二酸化炭素などの温暖化ガスが含まれていますが、その量はとても微量です。

 この研究では火山活動と温暖化を結び付けるために以下のようなメカニズムを考えています。まず大陸の分裂によって海が開き、その海洋底に溜まった炭素質物質を多く含む堆積物へプレート拡大境界で生まれた海洋底玄武岩マグマが貫入し、その熱で堆積物から二酸化炭素やメタンがあぶりだされ、大気に放出されるというメカニズムです。この論文では、このメカニズムの妥当性は、ほとんど議論しておりませんが、このメカニズム自体は、何年か前から提案されている一つの仮説のようです。

参考:
ウィキペディア 地質時代

Ocean Drilling ProjectによるPETM研究



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