北海道駒ケ岳


火山という地球化学的な窓から見える沈み込んだプレート

 関東から中部地方の第四紀火山の火山岩を精密に化学分析し、沈み込んだプレートから放出された“流体”がマグマ発生に与えた影響を調べたところ、地震学的にわかっている太平洋プレートとフィリピン海プレートの重なり合いとちょうどよく合う結果が得られたという研究が発表されました。

 地球物理学的に見える地球深部構造と火山岩の化学的特徴が見事に対応している点が驚きです。火山はいわば地球深部を見るための地球化学的な窓というわけです。

Nature Geoscience
Hitomi Nakamura, Hikaru Iwamori and Jun-Ichi Kimura
Geochemical evidence for enhanced fluid flux due to overlapping subducting plates
http://www.nature.com/ngeo/journal/v1/n6/abs/ngeo200.html

 海洋プレートがマントルに沈み込んで、ある深さで水を主成分とする“流体”を直上のマントル内に放出することによってマントルが融けやすくなり、そこで発生したマグマの活動によって“島弧”では火山が出来ると考えられています。

 水で湿ったタオルのような海洋プレートが、地下に沈み込んで、地下の圧力によって水がしぼり出されるようなイメージでしょうか。タオルの場合には繊維の間に水が保たれていますが、海洋プレートの場合には鉱物の結晶構造の中に水が保たれています。

 日本列島は島弧です。
 例えば東北日本の地下深部では東から西に向かって沈み込む太平洋プレートによって、火山が誕生していると考えられます。中部日本では、太平洋プレートが沈み込んでいるだけでなく、南から北にフィリピン海プレートが沈み込み、プレートの重なり合い(太平洋プレートの上にフィリピン海プレート)がマントル内で生じていることが地震学的に推定されています。

 今回の研究では、関東・中部地方の多くの火山の岩石について、極微量含まれている鉛やネオジムの含有割合や同位体比の化学分析が行われました。プレートから放出される流体に極微量含まれているこれらの成分は、太平洋プレートとフィリピン海プレートで異なり、発生したマグマの中にもその違いが残されるようです。そして、それぞれの火山のマグマが発生する場でのこれらのプレートからの流体の影響を調べたところ、

1.東北日本の蔵王火山では、フィリピン海プレートの影響は無い。(地震学的にも蔵王火山の下にはフィリピン海プレートが見えない。)

2.那須−赤城火山では、わずかにフィリピン海プレートの影響があるものの、基本的には太平洋プレートに由来する流体の影響が強い。(那須−赤城火山の地下には、太平洋プレートの上にフィリピン海プレートの端がかかるように地震学では見える。)

3.両白山地の火山(例えば白山)は、フィリピン海プレートからの流体が強く影響している。(両白山地の地下では太平洋プレートの上でフィリピン海プレートが急角度で沈み込んでいるように地震学的には見える。)

4.石川県の戸室火山のマグマには、フィリピン海プレート起源の流体の影響は見られない。(地震学的にはフィリピン海プレートの先端が戸室火山下にはまだ到達していないように見える。)

 両白山地の火山のマグマの発生には、フィリピン海プレートの影響が強いものの、その下に存在している太平洋プレートに起源を持つ流体もわずかに影響していることから、フィリピン海プレートは下から来る流体の上昇を妨げてはいないことも面白いですね。両白山地の中でもフィリピン海プレートからの流体の関与が強いのは烏帽子岳−鷲ヶ岳だそうです。


 

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