日本火山の会・火山学最前線レポート 特別解説 No.2 Fig.6 |
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図は,地球化学的な解析結果に,地震学的な研究(Nakajima & Hasegawa, 2007)から得られたフィリピン海プレート上面(深発地震面)の等深線を重ねたもの.等深線は一部、推定です(点線で表示).円の大きさはマントルに付加されたスラブ流体量の大小関係を示し,円グラフは、二つのプレートからのスラブ流体の寄与の割合を示しています(緑色は太平洋プレート,オレンジ色はフィリピン海プレート起源).円の大きさと円グラフの割合から以下の三つの領域に分けられます.太い点線はこれらの領域の境界を示し,このうち西側の点線はほぼ糸魚川静岡構造線に一致します. @那須領域(主に関東地域) 東北日本弧から連続する地域であり,那須,高原,女峰赤薙,男体,赤城などの火山が位置しています.流体量は東北日本弧よりもわずかに高く,フィリピン海プレートの寄与度は南に行くほど顕著になると言えます. A富士―妙高領域(伊豆半島の北) 東北日本弧から伊豆弧にかけて続く火山フロントが,西側に折れ曲がる屈曲部に相当する地点を含み,更に北へ向かって火山が連なっている地域.富士,黒富士,西餅屋玄武岩,浅間,四阿,御飯,毛無,妙高などの火山が位置しています.流体の付加量はとても小さく,フィリピン海プレートの寄与度もとても小さいという特徴があります. B両白領域(乗鞍白山火山群地域) この地域の太平洋プレートの深発地震面は一般的に火山が出来ると考えられている位置よりも深いのですが(200-300km),多くの火山が分布しています.御嶽,野麦峠火山岩,立山,白馬大池,烏帽子鷲が岳,経ヶ岳,大日ヶ岳,大日山,白山,戸室山などの火山が位置しています.流体の付加量はとても大きく,他の二つの地域より多くの流体がマントルに付加していることが分かります.また,流体の起源は太平洋プレートだけでなくフィリピン海プレートにも由来しています. 中部日本全体に認められる太平洋プレートからの流体の供給に加え,地域ごとに異なるフィリピン海プレートからの流体の供給が起こり,両者が重なる地域(例えば両白地域)では流体量が増加するという傾向が明らかになりました.これは二重のプレートの沈み込みによって付加される流体量が大きく増加し,これらがマグマの生成に直接関与していることを示しています. 参考文献: ■ 中村 仁美・岩森 光・木村 純一(2007) 中部日本における二重のプレート沈み込みとスラブ由来の流体の挙動 月刊地球, -海洋プレートと島弧の深部構造-IODP超深度掘削へ向けて-,29,9,570-577,海洋出版 ■ Nakajima, J. & Hasegawa, A. (2007) Subduction of the Philippine Sea plate beneath southwestern Japan: Slab geometry and its relationship to arc magmatism. J. Geophys. Res. 112, B08306 . |