
山麓からボルケーノハイウェイを登ってくると、やがて雲の上に出ました。朝の青空の下、茶臼岳がさわやかです。
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集合場所はボルケーノハイウェイの最奥・峠の茶屋の駐車場。
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駐車場から数百メートルの距離を下って、ロープウェイ駅へ。標高1700mまではロープウェイで一気に登りました。
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ロープウェイを降りたら、山頂に向かって急斜面を登っていきます。最初に登る斜面は火砕物で覆われたザラザラした道です。茶臼岳で度々起こる“ブルカノ式噴火”で噴出した火砕物で斜面は覆われています。
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少し歩いたところで、ブルカノ式噴火の説明。ブルカノ式噴火は、突発的な爆発の後に、噴煙を伴って火砕物が放出され、比較的短時間(秒から分)に噴火が終了する爆発的噴火を指します。ブルカノ式噴火を特徴付ける表面現象として衝撃波の発生・火山弾の放出・噴煙の発生・細粒火山灰の降下があげられます。茶臼岳山頂への登り始めの斜面では、ブルカノ式噴火の噴出物が良く観察できます。特徴的なものとして“パン皮状火山弾”を見つけることが出来ます。
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目を凝らしながらゆっくり登ったところ、早速、良いパン皮状火山弾が見つかりました。パンを焼いたときのように表面にの割れ目が出来ることから“パン皮”と呼ばれています。英語でも“breadcrust”といいます。パン皮火山弾の出来方は以下のとおり。(1)爆発的な噴火によってマグマが空中に放り出され、火山弾となる。(2)空気に触れて火山弾の表面は固まる。(3)火山弾の内部は、表面に比べゆっくりと冷えるために、ある程度の時間、流動性を保つ。そのため表面が固まった後も発泡により内部は膨らむ。(4)固まった表面の皮が内部の膨張により割れる。
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こちらは地中に半分埋まっている巨大なパン皮状火山弾。最初に見つけた火山弾に比べ、表面のパン皮の割れ方が細かいです。
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登っているうちに霧が晴れて、茶臼岳の山頂部が現れました。茶臼岳の山頂部は室町時代(15世紀)の噴火によって出現した溶岩ドームです。溶岩ドームは、それ以前にあった火砕丘の上に乗っています。この場所からは、山頂から下に目を移していくと、岩塊でゴロゴロした斜面の溶岩ドームから、外側に傾いた細かい地層からなる火砕丘の斜面へと変化するのが良く見えます。溶岩ドームと火砕丘の境界付近は火山ガスの通り道になっていて、噴気ガスによって白い変質帯になっています。
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斜面を登っていくと、溶岩ドームの下位にある火砕丘を造っている地層が良く観察できました。
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これらの地層もブルカノ式噴火による噴出物からなります。細かい降下火山灰や数cmくらいの発泡の悪い降下火山礫に混じり、10cmを越える火山弾らしき岩塊も地層にめり込んでいます。
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もう少し登ると、溶岩ドームと火砕丘の境界に生じている変質帯を登山道は横切ります。わずかに硫化水素の臭いがします。変質によって粘土化した部分では、謎の結晶が見かり、皆さん、観察中です。
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大きいものでは長さが1cmはある細長くて灰色の結晶でした。
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変質帯のそばには弱い噴気がありました。ただいま噴気孔の温度を持参した熱電対で測定中。
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さて変質帯を過ぎると、登山道は溶岩ドームを登っていきます。目の前には、巨大な岩塊がそそり立っています。
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溶岩ドームの山頂に向かって、岩塊でゴロゴロの登山道を登っていきます。
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溶岩ドームの岩塊に腰を下ろし、山頂で昼食をとりました。
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お腹が満たされたところで、山頂から峰の茶屋へと下っていきます。
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途中では溶岩ドームの岩塊の割れ目に咲いている“ど根性”ウラジロタデを見つけました。
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アルペンムード満点の道をどんどん下っていきます。向かいには朝日岳が良く見えてきました。
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こちらは風化によって黒味を帯びた板状節理が目立つ岩塊。変身したハウルに似ているので“ハウル岩”と命名。
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峰の茶屋に下る登山道は途中で平坦地に出ます。そこには、謎の列石があります。凍結破砕による構造土?氷河堆積物??といろいろアイディアが出ましたが、昭和期まで茶臼岳の噴気帯で稼動していた硫黄鉱山の遺構という結論になりました。噴気帯から火山ガスを煙道を通じて導き、途中でガスを冷却することにより自然硫黄を結晶化させ、採取していたそうです。この列石はその施設の一部だったと思われます。
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列石のそばでガンコウランを見つけました。遺構はゆっくりと自然の中に埋もれていくようです。
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もう少し降りたところではシラタマノキ。サロメチール風味。
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こちらはアカモノ。といった具合に、高山植物をいくつか愛でることも出来ました。
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峰の茶屋そばから茶臼岳西側の噴気帯を眺めます。風景の中にはポツポツとかつての硫黄鉱山の遺構が見つかります。さて一行は峰の茶屋から大無間地獄を目指して歩き出しました。
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さらに歩いていくと、大無間地獄の大噴気がお目見え。画像ではスケールが良く分かりませんが、噴気孔から噴出される水蒸気は時には茶臼岳山頂よりも高く上がります。さすがにこの噴気孔へは近づけません。登山道はこの大噴気帯のすぐ下を通過していきます。
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登山道を歩く限り、噴気を必要以上に恐れる必要はありません。登山道を外れて激しい噴気に近づくのは危険です。
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牛ヶ首に近づいた頃、小雨がぱらついて来そうだったのでロープウェイ駅に向かうことにしました。大無間地獄とうって変わって、茶臼岳の南東斜面は高山植物に覆われています。
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途中には、高温酸化して赤くなった火砕流堆積物の露頭もありました。
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霧が濃くなってきました。ロープウェイ駅に急ぎます。
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峠の茶屋に戻った後、有名なテフラ露頭を見に行きました(フィールドガイド日本の火山・地点4)。この季節は藪が深くて、少々観察しにくかったです。
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登山の後のビールは格別です。今回のOFF会は、はじめての軽登山OFF会で、皆さん疲れたと思います。でも活火山の懐深く入っただけあって、生々しい火山の魅力を堪能していただけたかと思います。また是非、次回もご参加下さい。
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