北海道駒ケ岳
日本火山の会 '10 磐梯吾妻火山OFF会

2010年磐梯吾妻火山OFF会

2010年6月5・6日

 梅雨入り前の週末を狙って、磐梯・吾妻火山でのOFF会が開催されました。火山の会にとっては初めての東北地方での火山OFF会となります。関東〜東北地方から総勢23名の参加者が集いました。また、本OFF会の前にはプレOFF会が阿武隈洞で行われました。

 1日目は、雷雲と雨に追いかけられながらのスリリングな天候の中、磐梯山噴火記念館の佐藤さんのご案内により、山体崩壊を起こした磐梯山1888年噴火の痕跡を中心に数々の観察ポイントを巡ることができました。佐藤さんが続々と発掘されている噴火直後の写真を、実際にそれらが撮影された現場で紹介いただけたので、1888年噴火の壮絶さ・臨場感を感じる事が出来たと思います。

 前日から一転し、2日目はこの上ない快晴に恵まれ、新緑の磐梯吾妻を巡ることができました。中瀬沼からの磐梯山・馬蹄形カルデラの絶景、湖見峠からの安達太良山・猪苗代湖・磐梯山・裏磐梯の大展望、吾妻小富士では活発化している大穴噴気の他、山腹の溶岩流地形、福島盆地、遠く蔵王連峰まで望めました。

文責:竹内


 郡山駅では新幹線利用者がまず集合。

 猪苗代駅で佐藤さんも含め全員集合。

 町役場駐車場で磐梯山の概要をまず解説頂きました。

 解説の後は、この場所でキッチン火山学実験の実演!磐梯山の立体模型をココア岩屑流が流れ下りました。

 最初の観察&お弁当ポイントは猪苗代リゾートスキー場。

 猪苗代リゾートスキー場では、3万6千年前に発生した翁島岩屑なだれによって出来た流れ山地形を眺めながらの昼食です。翁島岩屑なだれは磐梯山の南西山麓に流れ下っており、その規模は1888年の山体崩壊の3倍といいます。

 猪苗代湖の向こうには、約140万年前の巨大噴火で出来た布引山の火砕流台地の平坦面も眺められました。

 スキー場から少し西に移動し、天境台から風景を眺めました。

 天境台からは、猪苗代湖や磐梯山の西側を走る川桁断層がつくる地形を味わいます。猪苗代湖上にはなにやら雨雲が現れてきました。

 続いては見祢の大石に向かいました。見祢地域は1888年噴火の際、南東方向に発生した爆風と泥流による被災地域です。噴火直後にこの地で撮影された写真と現在の風景を見比べています。

 見祢の大石は、1888年噴火の際の泥流に伴ってこの場所まで運ばれてきた巨大岩塊です。噴火直後に大石の周辺で復興作業に追われている人々を写した貴重な写真が残されています。

 次のポイントは長坂。爆風による家屋の被害は小さかったにもかかわらず、農作業中に泥流に襲われたことにより多くの犠牲者が出たという地です。

 いよいよ1888年噴火の核心部に行くべくハイキングの準備。

 1888年噴火で開いた馬蹄形カルデラ内にある銅沼(あかぬま)に向けてハイキングの開始です。

 馬蹄形カルデラの底に残る“アバランシェバレー”という箱型の浸食地形の中を登っていきます。岩屑なだれが集中的に流れ、深くえぐられることによって出来たと考えられている浸食地形です。画像左には、浸食によって出来た急な崖があります。

 急な登りがひと段落したところで、風景解説。遠くには1888年噴火の岩屑なだれによる流れ山群や、その際の堰き止めによって出来た桧原湖が望めます。流れ山地形をバックに山体崩壊に関する解説を聞きました。

 その後は銅沼に向かって平坦な森の中を進みます。断続的に雨に降られています。

 銅沼に到着。眼前には馬蹄形カルデラ壁の荒々しい風景が。カルデラ壁の一部からは噴気が立ち上がり、磐梯山が活火山であることを改めて感じさせます。

 火山ガスが原因で銅沼の水質は酸性を示すことをリトマス試験紙を使って確認しました。

 銅沼から下山の後に磐梯山噴火記念館を見学し、今日一日のテーマだった1888年噴火を復習しました。磐梯山のお土産も忘れずに。

 3Dワールド裏の流れ山の断面も観察しました。

 おんせんロッジこはんに到着し、ひと風呂浴びたところで、夕飯の乾杯。

 夕飯の後には、佐藤さんから火山と絵画などのお話を頂きました。

 二日目の朝を迎えました。見事な快晴です。おんせんロッジこはんの建物も鮮やかに映えます。

 早起きして近くの白布峠まで上がり、磐梯山を撮影した方も。

 二日目の初めの観察ポイントは中瀬沼。中瀬沼までは、気持のよい新緑の道を行きます。

 中瀬沼は1888年噴火の岩屑なだれによって出来た流れ山地形の真っただ中にあります。沼を手前に荒々しい磐梯の馬蹄形カルデラを撮影できるスポットです。周辺には流れ山群の凹凸地形に大小数々の湖沼が点在しています。

 中瀬沼を最後に磐梯山を離れ、浄土平を目指し磐梯吾妻スカイラインへ。大穴噴気の活発化を伝える看板が。

 磐梯吾妻スカイライン途中の湖見峠で下車。

 湖見峠からは磐梯山を遠望しました。磐梯山の左には猪苗代湖も見えています。

 浄土平に近づいてくると、活発化中の大穴噴気が現れました。

 浄土平からは大穴噴気が間近です。

 時折、噴気の轟音が耳に入ります。

 浄土平から吾妻小富士に登ります。吾妻小富士は約6〜5千年前に出来た火砕丘です。大きな噴火によって一気に出来たというよりも、比較的長い時間をかけて小中規模爆発(ブルカノ式噴火)を繰り返し、つくられたと考えられています。吾妻小富士への登山道途中ではパン皮状火山弾を見つけることができます。パン皮状火山弾が階段の土止めとして使われている場合もあります。

 火砕丘を登り、火口縁に到着すると、浄土平・大穴火口・一切経山が展望できます。一切経山の斜面には馬蹄形カルデラが開いており、そのカルデラ壁が眺められます。浄土平はカルデラ底、吾妻小富士や桶沼はカルデラ内に出来た中央火口丘という関係になります。

 巨大パン皮状火山弾を利用したケルンに集まります。この後は時計回りにお鉢巡り(火口一周)に向かいます。

 見かけよりも意外に疲れる登りがしばらく続きます。

 お鉢を90°程巡ると、浄土平カルデラ壁から、カルデラ底を流れた溶岩流地形、遠くに福島盆地の大パノラマが眺められました。吾妻小富士のゆるい斜面には新鮮な溶岩流地形が観察できます。溶岩流を縁取るように発達する"溶岩堤防"や、溶岩堤防の方向と直行する方向に発達する"溶岩じわ"が観察ポイントです。かなたには蔵王連峰がそびえています。

 お鉢の最高地点から展望を楽しみます。

 最高地点を過ぎると、降下火砕堆積物の露頭が現れます。

 お鉢めぐりも終盤です。火口縁から覗き込む火口の風景は迫力がありました。

 お鉢巡りを終えた疲れた体には、浄土平の山塩ソフトクリーム(温泉水から取れた山塩使用)。

 最後の観察地点・つばくろ谷では、吾妻火山の最も古い時期の活動でもらたされた溶岩流を観察。

 つばくろ谷で一旦、解散の挨拶。その後、福島駅へ。

 福島駅近くからも、大穴噴気を仰ぎ見ることができました。

 磐梯山・銅沼での記念撮影。皆さん、二日間お疲れさまでした。
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